抱井尚子(2015)混合研究法入門を読んだ。
結論から言うと、現時点で日本語で読める混合研究法のテキストとしてはベストの一冊である。
これまでも混合研究法については、いくつかの著作がでている。
たとえば、下記3冊は、それぞれ有益な情報を提供してくれる。
しかし、いずれも断片的な情報であったり、邦訳がやや読みづらかったりと課題も多かった。
それに比べて本書は、混合研究法の歴史から最新の情報まで網羅したうえ、今後の展開まで述べるというボリューム満点のデキである。にもかかわらず、2000円(税抜)で、たった138ページ。この薄さに、よくこれだけの情報を詰め込んだものである。
混合研究法は、日本ではまだそれほど紹介されておらず、本書の引用文献もほとんどが洋書である。また、看護や医療保健の分野に偏っていることが多いため、社会科学一般に向けておすすめできる書籍は、それほど多くなかった。
この点、本書は看護や医療保健の事例を中心にはしつつも、社会科学一般の読者を想定して書かれている。しかも初学者に向け、わかりやすく情報を整理しつつも、学びたい人向けの引用文献リストも充実させるという力の入りっぷりである。
値段が安いことから最初はそれほど期待していなかったのだが、中身を読んで感動した。
個人的には、質的研究主導型MMRという試みや、CAQDAS(Computer-Assisted Qualitative Data Analysis Soft)の利用などといった新しいトピックに触れている点が大変参考になった。
混合研究法に興味のある方は、ぜひ手元に置いておくべき本だと思う。