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教育社会学の入門書(その壱)

投稿日:2015-01-14 更新日:

教育社会学の入門書の紹介(その壱)です。

一口に教育社会学と言ってもカバーする範囲が広いので、入門書の傾向もさまざまです。

ここでは、Amazonを「教育社会学」で検索してヒットした順番に紹介していきます(ただし、自分が持っている本限定です)。

教育の社会学 新版 ―常識の問い方、見直し方―

不登校・幼児教育・ジェンダー・学歴社会という4つのテーマから成り立っています。

それほど難しくない内容なので、初学者がいきなり読んでも大丈夫でしょう。巻末には、図書紹介やキーワード解説もついています。著者も有名人ばかりなので、日本の教育社会学の王道的内容と言ってよいと思います。

教育社会学【教師教育テキストシリーズ】

この本の特徴は、B・バーンステインの理論を引用した箇所が非常に多いという点です。編者の久冨氏がバーンステイン研究をしていたので、当然なのですが。

この本の問題点は、バーンステインが多用されるため、教師教育のテキストとしてはやや難解だという点でしょう。社会学にある程度明るい人なら問題ないのですが、まったくの初学者や、あるいは教師を目指している人にはややわかりづらいかもしれません。逆に、バーンステインに関心を持つ人であれば楽しめると思います。

教育社会学【有斐閣】

ややむずかしいので、初学者にはハードルが高い本でしょう。また出版されたのが1992年と古いので、今から考えると理解しづらい記述も見られます。

ただ、執筆陣には学会の有名人が少なくないので、ある程度教育社会学の入門書を読んだあとなら、面白く読めるかもしれません。

教育格差の社会学

社会学を銘打ってありますが、社会学の入門書と捉えるより、教育格差に関する入門書と考えたほうが面白く読めます。テーマとしては、学力格差・高等教育・逸脱・ジェンダー・国際教育開発・福祉など多岐にわたっているので、こうしたキーワードに興味がある方にオススメです。

教育の比較社会学

ちょっと評価に困る本です。

いじめ問題・学歴社会論・学力低下・若年就労問題といった章がある一方で、イギリス・アメリカ・中国・シンガポールの教育改革という章があるため、社会学なのか教育学なのか、いまいち焦点がよくわからない本です。国際比較に関心がある人であれば、面白いかもしれません。

よくわかる教育社会学

入門書というより、キーワード集と言ったほうが近いと思います。

見開き2ページで、さまざまなキーワードについて説明が行われています。そのため、キーワードが豊富で教育社会学に関わることが網羅されている一方、個々の章の記述は物足りません。

辞典やキーワード集としては非常に有用なので、教育社会学について体系的に勉強したいとき手元にあると便利です。資料集としても有益でしょう。ただし、最初の入門書としてはオススメできません。

新版 教育社会学を学ぶ人のために

日本の教育社会学について、ある程度知っている人でないと、読んでもよくわからないでしょう。個々の章の内容は独立しているので、著者や内容に興味があれば、その章を目的として読んだらよいと思います。最初の入門書としてはオススメできません。

新版 教育社会学

むずかしいところもありますが、放送大学の教材なので、独学は可能です。

本書の特徴として、乳幼児期から始まって、学校を経由し、就職していく過程を辿った章構成になっている点があげられます。ただ、この構成がわかりやすさにつながっているかというと、よくわからないのですが・・・。

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執筆者:


  1. gymnastics より:

    家裁調査官試験の記述式の参考書として
    主に「よくわかる教育社会学」
    「新時代の教育社会学」
    「教育の社会学」
    の三つでどれが良いか迷っていましたが
    新時代のが良さげですね。
    大変参考になりました。
    ありがとうございます。

  2. gymnastics より:

    すいません。 
    「新しい時代の教育社会学」
    でしたね。
    また私が家裁の記述式に良さげと感じたのは王道的な内容と言われる
    「教育の社会学」
    になります。
    訂正申し訳ありませんでした。

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